タイトル:大規模工場の移転にともなう土地利用用途の変化による経済波及効果の研究
若江直生 吉田哲 宗本順三
(社)日本都市計画学会 都市計画論文集 No.41-3 2006年10月
http://pkawap20.ce.t.kanazawa-u.ac.jp/~urbanplan/all/pdf/2006-41-3-35-205.pdf
背景・目的
国内産業構造の変化にともない、製造業を中心に発展を遂げてきた工業地域では、大規模工場の移転、操業停止による大規模小売店舗や物流施設、マンションなどへの用途転換や空地化が進んでいる。広大な工場跡地を遊休地として放置しておけば、様々な問題が発生する可能性があるが、短期的な経済活性化の手段として安易な開発を行ってゆくと、別の問題が生じかねない。都市近郊の工業地域での土地利用の誘導を適切に行うことが望まれている。
本研究では、工場跡地の用途転換が大規模に進む尼崎市を対象とし、市レベルの産業連関表を独自に作成し、これを用いて産業連関分析を行うことを第一の目的とする。さらに、市内から複数の大規模工場が移転していくことを想定し、その跡地に想定し得る用途が立地した場合の経済効果をシミュレートすることを第二の目的とする。
工場の移転とその産業への影響を市レベルでシミュレートすることは、大規模な工場用地を有する都市の土地利用の誘導に有効である。
結果・分析・まとめ
4期の化学工場の移転について取り上げられている。化学工場の移転によるマイナス波及効果を、新用途の立地による波及効果が上回った。これは、大規模商業施設の立地によるものと考えている。また、2400人以上の就業者の誘発や、2800人以上分の住宅が供給された。
全体的に見て、4期波及効果がプラスとなったのは化学工場移転によるマイナス波及効果が、他の場合に比べ小さかった為である。移転する工場と新しく立地させる用途とのバランスが、短期的な経済から見ると重要だということがわかる。
工場移転によるマイナス波及効果は本シミュレーションで想定した新用途が立地する場合には、移転のみが生じた場合より波及効果が増加し、マイナス波及効果を新規立地の用途によって約9割補填しうることが分かった。市内の生産額や生産波及効果が大きくマイナスにならないよう産業や工場移転の順序を考慮する必要のあることも明らかになったとしている。
感想
本論文は、経済的な要素も入っていたので理解するのに苦労した。しかし、土地利用を様々な観点から見ることはとても大切なことであると思うので、大変参考になったと思う。工場移転によるマイナスの効果は大きいが、その後の土地利用の仕方を良く考えることにより、その穴埋めをすることができるということがわかった。
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